回路基本/信頼性設計                   


工学分野において、システム・装置または部品が使用開始から寿命を迎えるまでの期間を通して、
予め期待した機能を果たせるように、すなわち故障や性能の劣化が発生しないように
考慮して設計する手法のこと。[Wikipedia]

大きくは、設計初期の段階で、システム・装置または部品(以下、製品)のリスク分析を実施し、
その分析結果に基づき、各設計ステージにおいて、設計者一人々が品質の造り込みを
行うことが重要ですが、ここでは基本的な事項について述べます。


フェールセーフ
製品が故障した場合、より安全側に機能させること。
<例>
  1) 交通信号機において駆動回路の故障で事故に繋がるような信号器の
         点灯状態を検出したら、全ての信号灯器を消灯させる。
  2) 連続駆動で異常高温となる部品については、温度ヒューズを抱込ませる。
  3) 電源ラインに挿入するヒューズも、フェールセーフの一種です。
  4) 通信機能を有している製品においては色々な通信エラー状態を
        想定し、それに対応出来るようにしておく。


フールプルーフ
誤った操作をした場合に、これを認識し故障・事故に繋がらないようにすること。
<例>
  1) コネクタの誤挿入防止。同種・同ピンのコネクタが近くにあっては、
       誤挿入のリスクがあるので違うコネクタにする。
  2) 矛盾する操作を検知したら、警告し受付ない。
  3) 誤操作で重大な事象が発生する場合、安全ガードを設ける。
       ハードウエアにおいてもソフトウエアにおいても同じ。
  4) 複数の操作入力条件により、出力・動作が決定される場合、
       入力条件の遷移表を作成し、いかなる条件においても動作を規定しておく。


冗長性設計
故障が発生しても,もう一つあるいはそれ以上の余分な手段を用意しておき,
機能を継続出来るようにする。
<例>
  1) 二重化。制御用コントローラを並行運転させておき、
       メイン側がダウンしたら、サブ側に切換え、継続動作させる。
  2) 商用電源がダウンしたら、無停電電源装置(UPS/CVCF)に切替える。
  3) 下位装置からのデータを上位装置で蓄積・保存するシステムにおいて、
       上位装置側のトラブルでデータ破損した場合、下位装置から再入手
       出来るようにしておく。


異常処理
製品の仕様書記載事項を網羅して設計するということは当然ですが、
これは設計作業の一部に過ぎません。
    仕様書に記載されていない色々な事象をリストアップし、
これに対応することが必要です。
    フェールセーフフールプルーフと重複する部分もあると思いますが、
検討モレが無いよう、第三者評価も含め実施する必要があります。
<例>
     1) システムの場合、構成機器の障害発生時の対応。
          障害は単独、複数、及び全システムを想定する。
     2) 障害には、電源喪失、通信障害なども含める。
 

安 全 性
製品が周囲の人・物に危害を加えるようなことは、絶対にあってはなりません。
発火/発煙/感電/怪我などの対策は、
製造品質も含めて念入りに行う必要があります。
<例>
  1) 発熱性の部品は、容量のディレーティングを十分に取る。
       インピーダンス温度係数がマイナスの場合、熱暴走を起こす可能性がある。
  2) 短絡モードの故障がある部品については、短絡を想定した設計とする。
  3) 機器点検時に、点検者が感電しない様、絶縁材料を適材適所に配置する。
  4) 板金(構造物)のコーナー、エッジなどで怪我しない様に配慮する。
 

環境試験
机上での信頼性設計には限界があります。
やはり、試作機において使用環境に近い環境条件での試験は必須です。
<例>
  1) 環境試験(温度/湿度/結露/振動/高度)
  2) 入力電源・信号の試験(ノイズ/雷/過渡電圧/瞬停/高周波障害)
  3) 操作面の静電気試験
 

関連用語
フォールトトレランス
システムに障害が発生しても正しく動作し続けること。
フォールバック
障害が発生した部分を切り離し、稼働可能な部分だけで運用すること。
フェールソフト
システムに故障が発生したとき、部分的に動作を続行する縮退運転をすること。